先週の木金に函館で久々にマインドマップ・モデリングの講習を行った。
組み込みエンジニアなど実装周りを担当されているエンジニアの再教育事業でのモデリング教育。
UMLの文法を講義して終わり、ということにはしたくなかったので、wakhok時代に開発したモデリング教育の技法であるマインドマップ・モデリングを行うことにした。
一日目にマインドマップ・モデリングの文法や簡単な演習を行った後、二日目に実際の雑誌記事を用いて演習を行った。この二日目の演習が本番である。日本語の文章とモデルのマッピングの勘所をつかんでもらうという狙いがある。
今回は旬の話題ということで週刊 東洋経済 2010年 7/3号の特集『激烈!メディア覇権戦争』から『電子書籍は「本」を救うのか』をテーマに選んでみた。
以下はボクがサンプルで作ってみたマインドマップ・モデル。
モデル作成の過程を三段階で示している。
まず最初に記事中から単語を抜き出してマインドマップ・モデリングが定義しているBOIの下に配置する。
それぞれの枝は通常のマインドマップの技法を用いて自由に情報を整理する。
次の段階ではマインドマップ・モデリングの文法に従って用語の整理を行う。
用語の名寄せ・統合と用語間の関係を整理して、基本的な構造を抽出するのが目的である。
そして、以下が最終型。時間の関係があって完成というところまではいけなかったけど、大体の構造まで持ってくることができた。
全段階で得られた基本構造をベースにして、モデルのリファインを行う。
ここで重要なのが物語(ユースケース=利用事例)と出来事(イベント)によって記事の意図をモデルに注入する点である。
物語と出来事によって、モデルに動的な側面が加わる。そして、モデルを動作させるのに必要な静的構造の文脈が確定する。
こういったモデリングをUMLでももちろん行うことができるけど、仕掛けが大掛かりになりすぎて、演習という限られた時間では実現が困難というのが経験則。
この問題を解決するために開発した技法がマインドマップ・モデリングというわけである。
マインドマップ・モデリングのモデルは一般的なOOをベースにしている(正確にはボクが開発したSimpleModelingというプロファイルをメタモデルにしている)ので、このまま半機械的にクラス図やユースケース図に変換することが可能である。
今回もUMLによるモデリングはほとんど経験のないという受講者の方が多数おられたが、適切なマインドマップ・モデルを作成されていた。
いずれUMLを使うようになり、UMLによるモデリングを行う必要が出てくれば、今回の講習の成果を活かしていただけると思う。
久々にマインドマップ・モデリングをやってみてモデリングは楽しいなぁ、と再認識。
プログラミングと直結する設計モデルの作成はどちらかというと無駄な作業だと思うけど(Scalaを使って直接コーディングするかDSL化するのがよい)、ふわふわとした状況を具体的な形にしていく概念モデリングという作業はクラウド時代になっても引き続き重要な技術であり続けるだろう。
現在は新しく登場したプラットフォームであるクラウドの基盤技術に業界の関心が集中しているけど、いずれモデリングの方にも関心が移ってくることになるはずである。
そういったことも意識しつつ、今はマインドマップ・モデリングをどのように改修すればクラウドに対応できるのかといったことを切り口にしてクラウド時代のモデリングについてつらつらと考えている。