Modegramming Styleブログではモデリングとプログラミングの一体化を指向したModegrammingというコンセプトを提唱しており、その実現のための技術体系としてSimpleModelingを整備しています。
整備活動
2019年5月に以下の記事でSimpleModelingによるモデル駆動開発の活動をリブートしました。
整備活動の内容はプロダクトの開発とメタモデルの整備に分けられます。
プロダクト
SimpleModelingでは以下の4つのプロダクトの開発を進めています。いずれもオープンソースです。
- Smartdox :: 文書処理系
- SimpleModeler :: モデルコンパイラ
- Kaleidox :: アクション言語
- Arcadia :: Webフレームワーク
また商用製品としてボクがCTOをやっているEverforth社でクラウドプラットフォームであるPrefer Cloud Platform(以下PCP)を開発しています。
- Prefer Cloud Platform :: クラウド・プラットフォーム
Smartdox
SmartDoxは以前開発していたSmartDocの後継となる汎用の文書処理系です。
SmartDocはXMLをメタ言語としていましたが、SmartDoxは独自のプレインテキスト(MarkDownとEmacs orgから派生)をメタ言語としています。
SimpleModelingではLiterate Modeilingのアプローチを取っているので、モデルの中の自然言語記述部分の取扱いを重要視しています。
この部分の中核技術となるのがSmartDoxというわけです。
後述するSimpleModelerやKaleidoxはSmartDoxをメタ言語として使用し、この上に固有のメタモデルを構築しています。
SimpleModeler
SimpleModelerはSimpleModelのモデルからプログラムなどの成果物を生成するモデルコンパイラです。
SmartDoxをメタ言語として記述し、SimpleModelメタモデルのインスタンスとして記述したモデル部の情報から各種成果物を生成します。
以前開発していたXMLスキーマコンパイラである Relaxer によるプログラムの自動生成が極めて有効だったことを受けて、プログラムの自動生成のターゲットをオブジェクトモデルに広げるために新規に開発したのがSimpleModelerです。
SimpleModelerは基本機能は動作済みで後述のPCPの開発にも適用しています。
現在、後述するようにSimpleModelingのメタモデルの刷新を行っています。SimpleModelerは、この新メタモデルへの対応を行う予定です。
Kaleidox
Kaleidoxはオブジェクトモデリングとプログラミングをシームレスに連携させることを目的とするアクション言語です。
Kaleidoxの開発を進めながら以下の記事を書いてきました。
- Kaleidox
- Kaleidox: XML
- Kaleidox: HTML
- Kaleidox: JSON
- Kaleidox: LXSV
- Kaleidox: Record
- Kaleidox: Table
- Kaleidox: Matrix
- Kaleidox: 単回帰分析
- Kaleidox: モデル駆動開発
- Kaleidox/スタック
Kaleidoxはかなりよい感じで開発が進んでおり、プログラム開発のテスト環境としてボクが日常的に使用するツールになっています。
今年は、SimpleModeler統合を行うことで、モデル駆動開発のアクション言語として本格的に活用できるようにする予定です。
Arcadia
クラウド・アプリケーションでは、サーバーサイドのRESTサービスを中心に、Web、スマートフォン(iOS, Android)、デスクトップの3種類のUIフロントエンドの構成になります。
この中でWebフロントエンドのためのWebフレームワークとして開発中なのがArcadiaです。
モデルコンパイラが扱うオブジェクトモデルとWebアプリケーションの間はインピーダンスミスマッチが大きく、その間を埋めるミドルウェアの存在が重要になってきます。
Webアプリケーション独特の振る舞いや特性を吸収して、モデル駆動開発したアプリケーションロジックとWebでの実装をスムースに連携させることを目的としています。
Webアプリケーションも、大きくWebサーバー上での実行を中心としてWebページの遷移で振る舞いを構成する伝統的な方式(以下Webページ方式)とJavaScriptフレームワークを中心にGUIアプリケーション的な振る舞いを行う方式(以下JavaScriptフレームワーク方式)の2方式に分けることができ、現実的には両者の式の折衷案の方式(以下Web/JavaScript折衷方式)が使用されるケースが多いでしょう。
ArcaidaではWebページ方式をサポートするとともに、JavaScriptフレームワーク方式で必要になるJavaScriptベースのWebフレームワークの実行コンテナとしての機能を提供し、合わせてWeb/JavaScript折衷方式に対応していくというアプローチを取っています。
SimpleModelerから生成されるコードに対して、HTMLページのデザインを行えばアプリケーションが完成するエコシステムの構築を目指しています。
Arcaidaは基本部は開発済みです。Kaleidox、SimpleModelerを組み込んでモデル駆動対応を達成できた後に公開する予定です。
Prefer Cloud Platform
Prefer Cloud Platform(PCP)はEverforth社から商用のクラウド・プラットフォームとしてリリースされています。
PCPはAPIベースのクラウド・プラットフォームとして各種機能を提供するとともに、運用環境なども提供しており、多くのプロダクトで活用して頂いています。
PCPは開発当初からモデル駆動開発を実現する上で、クラウドプラットフォームの存在が重要となる、という認識のもと開発を進めてきており、モデル駆動開発とのシームレスな連携を行うための仕掛けを内包しています。
SimpleModeingは、対象となるプラットフォームに依存しないニュートラルな技術体系を指向していますが、高機能のサービスを提供しているプラットフォームの能力を引き出すことも重要機能としています。
両方向からのアプローチにより、SimpleModelingではPCPの提供する高度な各種機能を活用したアプリケーション開発も可能になる予定です。
SimpleModeingのオープンソースプロダクトのみのモデル駆動開発でも十分に有効ですが、PCPを併用すると運用やセキュリティも含めたより高度なクラウド・アプリケーションの開発・運用が可能になるという形を目指しています。
メタモデル
SimpleModelingでは以下の書籍で解説したモデルをベースとしています。
これらのモデルはボクがwakhokでモデリングを教えていた時に教科書としても使用できるように執筆したものです。教育用に使えると同時に、モデル駆動開発のメタモデルとしての利用も目的の一つにしています。
ただし、このメタモデルを設計した2008年当時とは状況が大きく変わっています。
クラウド・プラットフォームがシステム開発の日用品として普及したことで、クラウド・アプリケーションを簡単に構築できるようになりました。この効果を考える補助線として、大規模エンタープライズシステムのミドルウェア群が超低価格(数億円→数千円)で利用できるようになったと考えるとよいと思います。
これらのミドルウェアを活用すると、高度なアプリケーションが簡単に構築できるわけですが、逆にミドルウェアを使いこなすスキルがいと宝の持ち腐れになってしまいます。
またモデリング段階でもミドルウェアの活用を前提としたモデリングが必要になります。
このような状況に対応するために、SimpleModelのメタモデルを再設計することにしました。
最新のアプリケーション開発事情を踏まえた検討を行うこととして、まずそのスコープについて考えました。
この後、一連の以下の記事で検討を進めています。
一通り切り口の整理ができたので、SimpleModelerに取り込む準備をしているところです。
まとめ
SmartDox, SimpleModeler, Kaleidox, Arcadiaとモデル駆動開発を構成する各種ツールの開発を粛々と進めてきましたが、それなりに動くところまで来ることができました。
当面は、従前通りツールの開発状況の紹介や、メタモデルの検討を続ける予定ですが、今年の後半ぐらいに具体的な応用につながる内容の記事を書くことできればと考えています。