Pieris Books(ブックカフェ併設のセレクトショップ販売店)のシステム開発のプロジェクトを進めています。
現在はビジネス・モデルの作成中で以下のモデルを定義してきました。
- ビジネス・ビジョン
- ビジネス・ゴール
- ビジネス・コンテキスト図
この中でビジネス・コンテキスト図はビジネス・モデルを記述したBusiness.mdから生成するアプローチをとっています。
前回はビジネス・モデルを記述するBusiness.mdのフォーマットについて説明しました。
今回はBusiness.mdを使ってPieris Booksのビジネス・モデルを記述します。
Business.md
作成したBusiness.mdは次のものです。以下で各項目について説明します。
# Overview - scope : business # System ## Pieris Books Pieris Booksビジネス。 - 店舗 - ECサイト - 店舗販売プロセス - EC販売プロセス - 在庫管理プロセス 店舗とECサイトで商品販売を行う。 店舗には売れ筋商品のみ実商品を在庫として保管し、その場で販売を行う。 通常の商品は見本品のみ展示し、注文があった場合はEC販売プロセスで決済と配送を行う。 EC販売プロセスでは外部ECサービスを用い、決済や在庫管理、配送処理を外部ECサービスが 提供するものを利用する。 ただし、店舗顧客には通常の店舗での購入と同様にレジによるオペレーションで販売処理を行う。 ## 店舗 Pieris Booksの実店舗。 ## ECサイト Pieris BooksのECサイト。 # Process ## 店舗販売プロセス 店舗で商品販売を行う。 - 店舗 - 店舗顧客 - 店舗販売者 - EC販売プロセス - 在庫管理プロセス - 決済サービス ## EC販売プロセス ECサイトで商品販売を行う。 - 在庫管理プロセス - 外部ECサービス ## 在庫管理プロセス 実店舗での在庫管理を行う。 - 販売管理者 - 配送サービス 在庫管理の延長で配送サービスへの受け渡しも行う。 # Actor ## 店舗顧客 店舗の利用者。 店舗に在庫がある場合は直接購入することができる。 店舗に在庫がない場合は、見本品を参考に購入し配送で商品を受け取ることができる。 ## EC顧客 ECサイトの利用者。 ## 外部ECサービス 見本品を購入する際に使用する外部のECサービス。 ## 決済サービス ECまたは店舗での商品販売に使用する決済サービス。 ## 配送サービス ECでの商品販売を依頼する配送サービス。 ## 店舗販売者 店舗で商品の販売を行う。 店舗顧客に対して接客を行い、購入時はレジから購入登録を行う。 ## 店舗運営者 ビジネス上の店舗運営を行う。 ダッシュボードから各種のメトリクスを確認し、必要に応じてビジネス上の施策を行う。 ## 販売管理者 店舗での商品管理などを行う。 ## システム管理者 Pieris BooksのITシステムの管理を行う。
Overview
モデルの先頭のセクションはOverviewとなっています。ここにこのモデルの全体情報を記述します。
以下のようにscopeにbusinessが指定されているので、このモデルのスコープがビジネス・スコープであることを示しています。
- scope : business
System
最初のセクションはSystemです。このセクションはビジネス・システムを構成するシステムを記述します。システムはそれぞれ子セクションに記述します。子セクションの名前がシステム名です。
本モデルでは以下の3つのシステムが記述されています。
- Pieris Books
- 店舗
- ECサイト
それぞれのシステムの内容を自然言語(日本語)で記述しています。
システム「Pieris Books」には以下の記述があります。
- 店舗 - ECサイト - 店舗販売プロセス - EC販売プロセス - 在庫管理プロセス
これはPieris Booksの構造を記述した箇所です。
より正確に書く場合は以下のようになります。これはUMLの属性記述の文法に準拠しています。
- <<composition>> 店舗:店舗 [1..*] - <<composition>> ECサイト:ECサイト 1 - <<participant>> 店舗販売プロセス:店舗販売プロセス - <<participant>> EC販売プロセス:EC販売プロセス - <<participant>> 在庫管理プロセス:在庫管理プロセス
ビジネス・オブジェクト間の関係の種類はステレオタイプによって指定します。ターゲットのビジネス・オブジェクトによってデフォルトが変わります。
システムからシステムの場合はcomposition、システムからプロセスの場合はparticipantがデフォルト値です。
Process
次のセクションはProcessです。このセクションではビジネス・プロセスを記述します。
本モデルでは以下の3つのビジネス・プロセスが記述されています。
- 店舗販売プロセス
- EC販売プロセス
- 在庫管理プロセス
店舗販売プロセス
ビジネス・プロセスの店舗販売プロセスでは以下の記述があります。
- 店舗 - 店舗顧客 - 店舗販売者 - EC販売プロセス - 在庫管理プロセス - 決済サービス
これらは店舗販売プロセスを構成するビジネス・オブジェクトです。以下の情報が分かります。
- ビジネス・システム「店舗」の提供するサービスを利用する
- 参加するビジネス・アクターは「店舗顧客」、「店舗販売者」
- 連携するビジネス・プロセスは「EC販売プロセス」、「在庫管理プロセス」
- 使用する外部サービスは「決済サービス」
EC販売プロセス
ビジネス・プロセスのEC販売プロセスでは以下の記述があります。
- 在庫管理プロセス - 外部ECサービス
これらはC販売プロセスを構成するビジネス・オブジェクトです。以下の情報が分かります。
- 連携するビジネス・プロセスは「在庫管理プロセス」
- 使用する外部サービスは「外部ECサービス」
在庫管理プロセス
ビジネス・プロセスの在庫管理プロセスでは以下の記述があります。
- 販売管理者 - 配送サービス
これらは在庫管理プロセスを構成するビジネス・オブジェクトです。以下の情報が分かります。
- 参加するビジネス・アクターは「販売管理者」
- 使用する外部サービスは「配送サービス」
Actor
次のセクションはActorです。このセクションではビジネス・アクターを記述します。
アクターごとにサブセクションを設けます。サブセクション名がアクター名、サブセクションの内容がアクターの説明になります。
本モデルでは以下の9つのビジネス・アクターが記述されています。
- 店舗顧客
- EC顧客
- 外部ECサービス
- 決済サービス
- 配送サービス
- 店舗販売者
- 店舗運営者
- 販売管理者
- システム管理者
アクターについて、構造化した情報を記述できるようになっていますが、現段階では自然言語による説明文のみとなっています。
モデルの完成度
ビジネス・プロセスの定義はより詳細化していくことも可能ですが、今回はITシステムを開発する上での補完的な予備モデルという位置づけなので一旦ここまでにしておきます。
まとめ
今回はコンテキスト図を描くのに十分な情報量を持ったビジネス・モデルをBusiness.mdに記述しました。
次回はBusiness.mdの構造をもう少し掘り下げてみます。