2015年6月15日月曜日

野毛倶楽部夜会:超高速開発

野毛倶楽部(横浜クラウド勉強会)は土曜の昼に行うチュートリアル的な技術セッション(+夜学)を中心に活動してきましたが、これに加えて先端技術についてオフレコで語り合う場として新たに夜会を始めることにしました。

先週の月曜(6月8日)はその第1回でジャスミンソフトの贄さんを招いて超高速開発をテーマに野毛倶楽部の第1回夜会を行いました。

ジャスミンソフトは超高速開発ツールWagbyの開発/提供元で超高速開発コミュニティの幹事会社です。

プログラムの自動生成はボクも長年追いかけてきた技術分野なので、この分野で成功を収められているジャスミンソフトの具体的なお話をビジネス/技術両面からお聞きできてとても参考になりました。

ディスカッションの中では以下のキーワードが印象に残りました。

  • モデリング
  • リポジトリ

以下、夜会の後に考えたことなどをつらつら。

モデリング

プログラムの自動生成も現時点ではモデルからアプリケーション全体を生成できるわけではないですがアプリケーションの相当部分を自動生成(+フレームワーク)でカバーできるところまできています。

また「超高速開発」という枠組みでは仕様から直接システムやサブシステムを動作させるXEAD DriverASTERIA WARPといったアプローチもあります。

いずれにしても伝統的なスクラッチ開発と比べるとテストも含めたプログラム開発工数が劇的に少なくなることは明らかです。

プログラム開発工数が少なくなるのは「仕様」が直接、間接にそのまま動作するためですが、「動作可能な仕様」でなければならないので、動作可能な精密で網羅的な仕様を作成するスキルが必要になってきます。加えてシステムの既存部分やスクラッチ開発する部分との連携を仕様化するスキルも要求されます。

「動作可能な仕様」を記述する言語としてはOOADのUMLやデータモデリングのER図といったものが代表的ですがExcelやプレインテキストを用いるアプローチもあります。記述言語も大事ですが、裏側のメタモデルがより重要です。

顧客要件から動作可能な精密なレベルのUMLやER図などで記述した動作可能な精密な仕様を作成するモデリングのスキルが「超高速開発」を活用するための重要スキルということになります。

伝統的なスクラッチ開発でも基本設計書、構造設計書、詳細設計書という形で仕様書は書かれていたわけですが仕様に曖昧な点があってもプログラマが補完することで補うことが可能でした。というよりプログラマが高度な補完を行うことが前提だったといっても過言ではないでしょう。しかし「超高速開発」の場合は、仕様をそのまま動作させるため仕様段階で実行可能レベルの正確さが要求されるわけです。

こういった問題意識から超高速開発コミュニティでもモデリング分科会の活動を行っているのだと思います。

リポジトリ

「動作可能な仕様」によるシステム開発が軌道に乗ると、次はこの仕様をデータベースで一元管理したくなるのが道理です。「リポジトリ」はこのような機能を提供するものです。

「リポジトリ」はWikipediaでは以下のように説明されています。

  • リポジトリ (英: repository) とは、情報工学において、仕様・デザイン・ソースコード・テスト情報・インシデント情報など、システムの開発プロジェクトに関連するデータの一元的な貯蔵庫を意味する。

リポジトリは少なくてもボクがオブジェクト指向が調べ始めた90年代初頭にはすでにあった概念ですが、格納するメタデータの記述能力が追いつかず現時点でも部分的な応用にとどまっていると認識しています。メタデータと配備するプログラムが連動していないと、絵に描いた餅になってしまうわけですね。

OMGのMOF(Meta Object Facility)やEAI(Enterprise Application Integration)で話題となったMDM(Master Data Management)も同じようなジャンルの技術ですがまだ(一部の大企業のシステムは別として)一般的に幅広く利用されるような段階にはいたっていないと思います。

リポジトリで管理する情報が超高速開発流の「動作可能な仕様」となると、リポジトリで構想されていた本来の運用が見えてきます。

また、もうひとつの流れとしてソフトウェア構成管理技術の進歩があります。現在はCI技術によってGitHubにプログラムのソースコードをプッシュすると自動的にHerokuのような実行コンテナに配備したり、DockerHubのようにDockerイメージを生成したり、ということが可能になっています。

こういった構成管理技術と「動作可能な仕様」の「リポジトリ」を組み合わせることで、より高度な運用ができるはずです。

現時点で実用化されている要素技術を組み合わせれば、もともと「リポジトリ」で構想されていた理想的な運用に近しいところまでもっていけるのではないか。ブレークスルーの寸前まで各要素技術のポテンシャルが高くなってきており、後は誰がどのように最後のピースをつなげるか、が焦点の分野ではないかと思われるわけです。わくわくしますね。

"リポジトリ"のキーワードからそういったことを考えながら、野毛の夜は更けていきました。

SmartDoc

本題とは離れますが、Wagbyではマニュアル作成にSmartDocを現役で使って頂いているということです。うれしいですね。

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