8月27,28日にクラウド温泉@小樽が開催されました。今回のクラウド温泉も盛りだくさんの内容で、ボクとしてはF#について詳しいお話を聞けたのが収穫でした。発表者の@bleisさん、MSの荒井さん、参加者の皆様、どうもありがとうございました。
F#はScalaと同じオブジェクト指向と関数型のハイブリッド言語で、ざっくりとはだいたい同じことができると捉えてみてよさそうです。ただし、言語の狙いは異なるので、利用シーンは違ってきます。
以下、F#の知識は当日の聞きかじりを元にしているので、不正確なところが多いと思いますが、ボクの現時点での認識のメモということでご了承ください。
F#の言語のセマンティクスは関数型が主でオブジェクト指向は従のようです。
関数型の世界で扱うデータはレコード/タプルで、構造体的な言語要素となっています。そして、このレコードとは別にクラス/オブジェクトが用意されています。(変数に関数をバインドしてメソッド的に使えるかもしれませんが、この点は未確認。)
つまりデータを記述する言語要素が二系統あって、そのうちの一系統を使うと関数型言語らしいプログラミングが堪能できるということですね。
一方、クラス/オブジェクトは、当日確認しなかったのですが、恐らく.NETのクラス/オブジェクトだろうと思います。クラス/オブジェクトを通じて.NETのクラス/オブジェクトをC#やVBと相互に連携できるのではないかと推測します。
データを記述する言語要素が二系統あるのは、関数型言語としての純粋性を保ちたかったということもあるでしょうし、.NETのクラス/オブジェクトを関数型言語向けに拡張するのが難しかった、という制約に起因するところもありそうです。
また、データは基本的にイミュータブルで、mutableというキーワードを付けるとミュータブルにもできるというアプローチになっています。この点からも関数型の方に軸足があることが分かります。このため、状態の存在を前提としたプログラミングには、あまり向いておらず、つまるところオブジェクト指向プログラミング言語としてはあまり快適ではなさそうです。
F#では、型パラメータの省略ができて簡潔な記述が可能になっていますが、関数をオブジェクトのメソッドとしてポリモーフィックに動かすことをやめることにより(クラス/オブジェクトではなくレコード/タプルを使う効果)、共変/反変まわりの指定を考えなくてもよいので、そのあたりが寄与しているのかなと感じました。これも、関数型側に軸足を持っている効果です。
以上のようにF#は関数型側に大きく機能を倒して、オブジェクト指向的にはほどほどにして、関数型言語の美点を伸ばしていくアプローチのようです。
このアプローチの延長線上で、コンピューテーション式、seq/yieldといったところが、関数型言語の高度な応用で、マニア的に面白いところですね。どちらもDSLの記述力を高めることに大きく寄与する機能です。
F#は関数型言語として素晴らしい言語であるのは確かですが、関数型側に機能を倒しているため、オブジェクト指向言語としては快適というわけではなく、実務へ適用する汎用言語としては考えにくいのかなという印象を持ちました。F#一本ですべての応用を記述する、ということにはならないかなと。
そこで、F#を取り囲む文脈を考えてみましょう。F#は.NET上で動作することを前提とした言語であり、C#やC++といった.NETの他の言語と共存することが前提です。
C#の場合は、VBなどを置き換えていって、.NETの中心言語にしていくという意図もあったかと思いますが、F#の場合は、C#を置き換えるといったことは意図しておらず、C#を補完する立場になるでしょう。そうすると、C#ができることを全部カバーした上で、新たに関数型の機能を追加するといったことをする必要はなく、オブジェクト指向的な文法は.NETのクラス/オブジェクトと連携できるものがあれば十分と割り切ることができます。その上で、C#ではできない関数型のプログラミングモデルを使いやすいものにする方向に力をそそいでいるわけですね。
そういう意味で、F#は.NETワールドを構成するパーツの一つとして、並列プログラミングやDSLといった関数型に適した分野をカバーする専用言語という戦略上の意図を持った言語であると推測されます。
今後の技術の発展の方向は並列プログラミングとDSLが二大潮流になることは確実なので、この2つの分野に強い関数型言語を並行プログラミングとDSL向けを意識してチューニングし、.NETワールド内でのポジションを明確にした上で提供してきているのにはMicrosoftの底力を感じました。
F#は、monoと組合わせてMacやLinuxでも普通に動くみたいなので、DSLにフォーカスした応用ではプラットフォームを問わず実用的に使用できそうです。そういう意味でも面白い存在です。
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F#を使って株式等向けのチャートアプリを作りました。
返信削除結論としてはprotectedなどのオブジェクト機能が弱い所があるものの、ベターC#として殆どの部分をF#でより効率的に開発できると認識しました。
個人的には必要がない限りクライアントからサーバーまで全てにおいてF#を使っていく予定です。
まだMonoTouchやAzure開発でもC#前提にしている所が多く残念です・・・