2014年7月3日木曜日

関数型プログラミング技術マップ2014

来週の月曜(7月7日)に札幌で「実務者のためのかんたんScalaz」という勉強会を予定しています。
この勉強会は、クラウドアプリケーション開発の基本技術の情報展開を目的としたもので、以下の勉強会をシリーズで行っていく予定です。
  • 実務者のためのかんたんScalaプログラミング
  • 実務者のためのかんたんScala入出力プログラミング
  • 実務者のためのかんたんScala設計
  • 実務者のためのかんたんオブジェクト指向分析/設計
クラウドアプリケーションの開発技法を整備する上では、業務アプリケーション開発の基盤技術であるオブジェクト指向分析/設計、オブジェクト指向プログラミングの土台の上に関数型言語をどうのように接合していくのか、という点が焦点の一つと思います。
この議論を深めるためには、関数型言語の技術的な背景、文脈を整理することが必要ということで2012年に「関数型言語の技術マップ」を作成しました。
今回、勉強会向けにこの技術マップを改良してみました。
改良点は以下の2つです。
  • 純粋関数型言語の性質
  • モナドと圏論の位置付け

純粋関数型言語の性質

純粋関数型言語の性質として以下のものを参考に補足しました。
  • 不変 (immutable)
  • 副作用なし (no side effect)
  • 参照透過性 (referential transparency)
  • 置換モデル (substitution model)

モナドと圏論の位置付け

圏論の入門書を幾つかチェックしましたが、モナドについてはほとんど記載がなく、モナドは圏論の基本概念ではないらしいということが分かりました。
また、"圏論の中に(基本構成要素として?)モナドがあるのは違和感がある"というコメントもいただき、技術マップの中で圏論やモナドをどのように位置付けるかが懸案事項になっていました。
その後、色々と調べてみて分かったのですが、圏論については、種々存在する数学や情報科学の各分野を統一的に記述するための「普遍言語」と考えるのが適切のようです。
代数的構造だけでなく、プログラミング言語の構造や論理学も圏論で記述することが可能という関係になります。図にはこの理解を反映しました。
たとえば、位相空間の圏であるトポスで数理論理学のモデルを記述することができるようです。またプログラミング言語の圏としてHaskellのHask圏が有名です。
その上で「モナド(monad)」ですが、これは「プログラミング言語の圏で有効な概念」でこれを情報科学的に記述する時に圏論を用いる、という関係と考えるとよさそうです。「プログラミング言語の圏で有効な概念」なので、圏論を知らなくてもプログラミングに便利に使える概念のはずです。
圏論もモナドも難解な概念であるため、クラウドアプリケーションの開発者がどこまで理解しておく必要があるのか、という点が重要な論点になります。
この2つの概念を黒帯レベルで理解することが必須ということになると、現場への展開は事実上不可能になってしまいます。とはいえ全く知らないで良いということでもないと思うので、その線引が非常に重要になってきます。
勉強会では、ボクがこの辺りがよいのではと思っているラインについて、Scala言語での具体的なアプローチ方法も含めて、私案を展開したいと思います。

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